人に備わるストレス防御システム
現代社会において、「ストレスなどない」と言い切れる人はどのくらいいるでしょうか。ストレスを放っておくと身体機能を調整している自律神経の働きが乱れ、健康に大きな影響を及ぼします。
ただ、こうしたストレス性の病が大きく取り上げられるようになったのは、そう昔の話ではない。本来、人は病気になる前にストレスに対処できる能力を持ち合わせているのではないでしょうか。
人間はストレスを感じると、脳の視床下部から下垂体に向かって、CRF(Cortictropin Releasing Factor)というストレスホルモンを分泌します。これに反応して副腎(腎臓の一部)から分泌されるのが、アドレナリンとコルチゾール(糖質コルチコイド)というホルモンです。アドレナリンは、交感神経を刺激することで、心身共にいつでもストレスと戦える準備をします。対してコルチゾールはストレスと戦うために必要となるエネルギーを蓄えるものです。要するに、私たちの体には“ストレス防御システム”が備わっているわけです。
母性をつかさどるオキシトシンはストレスにも強い
オキシトシンとは、脳の視床下部で生成され、下垂体から分泌されるペプチドホルモンの一種です。
「そもそもオキシトシンは、『愛情ホルモン』とも呼ばれ、女性の妊娠・出産時に大量に分泌されるホルモンとして医療業界では有名です。陣痛促進剤として使われているのも、実はオキシトシンなんです。
美しい景色を眺める、好きな音楽を聴く、おいしいものを食べるなど、五感を刺激して人が気持ちいいと感じているときは、やはりオキシトシンは増えるのです。
ただ、もっと積極的にオキシトシンの分泌を促す方法として、『他者との触れ合い』が効果的だと分かってきたのです
ならばすぐにでも親しい人とタッチしたいところですが、現在は新型コロナウイルスの影響で、人と会うことすら難しい状況ですよね。そんなときにおすすめしたいのが、電話を使っての会話。
アメリカ・ウィスコンシン大学で行われた研究などから、人は触れ合うことができなくても、親しい人の声を聞くだけでオキシトシンが増えることがわかってきました。
※新型コロナウイルスの感染が疑われる人と触れ合うことは決して行わないでください。
高齢者の社会的孤立は健康リスクに!電話を使った交流を
実はいま、国内外の専門家が「電話を使った積極的な交流」をすすめています。その理由は、新型コロナウイルスの影響による、“高齢者の孤立”。人との接触を減らすことは、感染予防のためには非常に重要です。
しかしそれによって高齢者の社会的孤立が進み、それが循環器・血圧・認知機能などに関わる病気のリスクを高めるといわれているのです。そこで注目されているのが電話。
直接会うことができない今こそ、大切な方に電話をかけてみてはいかがですか?
人を思いやるだけでストレスは減る
誰かへの感謝や思いやりの気持ちを頭に思い浮かべるだけでも、オキシトシンが分泌されることが実験で判明しているんです。その他にも、ちょっとしたことでも『ありがとう』と感謝を伝えたり、会社の仲間とランチを囲んだりすることも効果的でしょう。とはいえ、その人間関係こそがストレスになる人もいるでしょう。
そんなときは、“万能ツボ”とされる「合谷(ごうこく)」を刺激するだけでもオキシトシンの分泌は促せるそうです。「親指と人差し指の間の付け根にあるくぼみを、気持ちのいい強さで押すだけでオキシトシンが分泌されることが判明していまので是非お試しください。